ビタミンやミネラルのサプリメントで健康・長生きできると思ってはいけません(後編)

ビタミンやミネラルのサプリメントで健康・長生きできると思ってはいけません(後編)

前回(前編)では、「サプリメントとはどういうものか?」のお話をしました。

今回(後編)は、サプリメントに関する、信頼性が高い臨床研究の結果をお話しします。

 

結果は、タイトルからわかると思います。

「好き嫌い」や「感覚」で、効果がないというのではありません。

「効果が認められないというデータがたくさんある」ということを、お話ししたいと思いますm(__)m

 

1. ビタミン・ミネラルのサプリメントの健康・長生き効果は認められていません(>_<)

2013年に、ビタミンやミネラルのサプリメントの論説が、アメリカの医学誌に掲載されました[1]。

その論説のタイトルは、以下のとおりです。

「もう十分。ビタミンやミネラルのサプリメントに金を浪費するのはやめよう」

この論説で示されたのは、以下のようなものでした。

「サプリメントの効果を検証しようとして実施された、これまでの多くの研究の結果を、総合的に吟味して、結局ここまで膨大な数の研究がなされてきたにもかかわらず、サプリメントの明確な効果は未だ認められていないことを示しています。」

 

簡単に言うと、こんな感じでしょうか。

「サプリメントって、全然効いてないじゃん!こんなにいっぱいいっぱい研究してきたのに!まだ効果わかんないの!?本当は効かないんだろ、これ!?」

ま、これは、 一人の専門家の意見に過ぎません。

これをもって結論を出すわけにはいきませんね。

それでは、この専門家の判断根拠となった3つの論文を読み解いていきましょう。

2. 3つのサプリメント論文における健康・長生き効果は?

①一つ目の論文

40万人もの健康な参加者に対して、「マルチビタミン」や「ミネラル」のサプリメントの効果を検討した論文です[2]。

「メタ解析」の結果です。

これまで何度も出てきた「メタ解析」です。

過去に実施された多くの研究結果を合体させる、信頼性が高い研究方法でしたね。

詳しくは、以前の記事をご覧ください。

 

結果:

  • 健康な人に、マルチビタミンやミネラルのサプリメントを飲んでも、明らかな「心臓の病気」や「がん」に対する予防効果は認められませんでした。
  • 死亡率も、サプリメントを飲まないグループと変わりませんでした。
  • 「心臓の病気」や「がん」だけでなく、すべての死因を含めても変わりませんでした。

 

ただ、この研究結果の中で、ギリギリで「効果あり」判定が付いた結果がありました。

この研究は、複数の臨床試験を合体させた結果ですが、

男性のみ、「がん」に対する予防効果が認められた試験がありました。

 

この結果について、研究を実施した研究者自身は、以下のように考察しています。

「このような限定された条件下での結果を過大に全体に当てはめるべきではない」

その理由は、以下のとおりです。


  • 女性では効果が認められなかったし。
  • 男性の「効果あり」判定もギリギリだったし。
  • 理論的には他の病気にも効くはずなのに、「効果あり」判定だったのは「がん」だけで、他のケースではどれもこれも「効果なし」だったし。

とのことです。

 

②二つ目の論文

65歳以上の高齢者5,947人を対象に、「認知機能」に対するマルチビタミンの効果を調査した論文です[3]。

 

結果:

実験開始から12年後、全体的な「認知機能」や「言語障害」に関して、マルチビタミンサプリメントの効果は認められませんでした。

 

③三つ目の論文

心筋梗塞になったことがある1,708人を対象に、マルチビタミンサプリメントが「心臓の病気」の再発を予防するかについて調べた論文です[4]。

 

結果:

4.6年の調査の結果、マルチビタミンによる「心臓の病気」の再発予防は認められませんでした。

 

もう一つ、サプリメントの研究では重要な問題があります。

効果が認められないどころか、逆にサプリメントの有害な作用が認められているのです!

ビタミンやミネラルのサプリメントには、以下のような有害な作用が確認されています(>_<)

  • 死亡率が高まる
  • 心筋梗塞が高まる
  • 肺がんが増える
  • 膀胱がんが増える
  • 胃がんが増える
  • 脳出血が増える
  • 骨折が増える

特に一番上の「死亡率が高まる」。

つまり、サプリメントを飲むことで、死にやすくなるということです。

これについては、後で詳しく考えましょう。

4. サプリメント論文の結果をふまえて、結局どうすればいいの?

論文[1]の著者は、以下のように結論しています。

  • ほとんどのサプリメントは、健康な人に対して、明確な効果が認められていない
  • それどころか、しばしば有害な効果が示されている
  • このようなビタミンやミネラルのサプリメントを、慢性的な病気を予防するために使うべきではない

 

考察①

サプリメントの効果が認められなかったことについて。

誤解がないように申し上げます。

前述の論文は、サプリメントが「無効」だと言っているわけではないですよ。

こういうことです。

サプリメントに効果があるかどうかを確かめるために、実験(臨床試験や臨床研究)をした。

その結果、効果を示すことができなかった。

論文の結論は、「効果があるとは言えない」ということです。

「効果があるとは言えない」は、「効果がない」とイコールではありません。

「効果があるとは言えない」≠「効果がない」

なので、サプリメントが「無効」だと証明されたというわけではありません。

「効果がないことを証明する」ということは、実は難しいのです。

 

これは、薬の効果だけの話ではありません。

「幽霊がいないこと証明してみろよ?」

「ツチノコがいないことを証明してみろよ?」

と言われても、証明できませんね。

こういうのを「悪魔の証明」と言いますね。

これと同じイメージで考えてもらっても良いです。

 

なので。

「まだ無効だと証明されていないなら、俺は飲み続ける!」

と考えるのも、個人の自由ではあります。

 

ただ、これだけたくさん、ビタミンやミネラルのサプリメントの研究をして、膨大なデータが集まっている現状で。

はっきりした良い結果を今でも出せていないということ。

この事実から言えることは、可能性は、以下の2つということです。

<可能性1>

本当に効果がない

<可能性2>

効果があったとしても、「見つけられないくらいのとても弱い効果」

もし強い効果を持っているのなら、これまでたくさんたくさんの研究で、一貫した効果を見つけられているはずなのです。

広い砂浜に落とした「ビー玉」は見つけることが困難ですが、「サッカーボール」はすぐ見つけられるでしょう?

(ちょっと違いますが、わかりやすく言うと)そういうことです。

考えられる可能性は、この2つのいずれかだということは理解しておくべきでしょう(・_・)

 

ちなみに、上述の論文①で、「男性のがん予防の効果が認められた試験があった」とお話ししました。

これは、「数打ちゃあたる理論」で説明できるかもしれません。

この理論の名前は、私が勝手に付けましたm(__)m

ちゃんとした言いかたは「多重性」といいます。

 

例えば。

一つの試験の中で、いろんな分析をします。


  • 「男性と女性に分けて結果を見てみよう」
  • 「高齢者と若者に分けて結果を見てみよう」
  • 「肥満の人とそうでない人に分けて結果を見てみよう」

みたいな。

するとどうなるでしょう?

本当は効果がなかったとしても、たまたま、どれか一つで効果が認められる(ように見える)ことがあるのです。

銃が下手なヒトでも、何回も打つと、たまたま的に当たることがあります。

でも、これは実力ではありません。まぐれです。

これが名付けて「数打ちゃ当たる理論」です。

ちゃんとした名前は「多重性の問題」と言います。

 

一つのグループだけで違う結果が出たとき。

本当に効果があったからなのか、まぐれだったのかを確かめるにはどうするか。

そのグループで効果があるかどうかを確かめるための臨床試験を、新たに実施しないと結論を出せません(^^;)

 

考察②

サプリメントで有害な作用が出たことについて。

前述の通り、過去のいくつかの試験では、サプリメントを飲むことで死亡率が高くなりました。

 

もちろん、飲んだらすぐにバタバタと倒れて死亡するわけではありません。

ほとんどの人は、特に何の症状も出ないと考えられます。

なので、ちゃんと調べないとわからないのです。

 

論文では、サプリメントを飲んだグループでは、飲まなかったグループよりも死亡率が高いという結果でした。

例えるなら、


  • サプリメントを飲まなかったグループ :調査期間中に、100人に1人が死亡
  • サプリメントを飲んだグループ:調査期間中に、100人に2人が死亡

(数値はデタラメです。説明のために仮の数値を入れました)

どうですか?

100人のうち98~99人は何も起こらないので、

「サプリメントを飲んだら悪影響が出るかもよ」

と言われても、信じられないでしょうね。

でも、 結果は客観的事実です。

1万人がサプリメントを飲んだら、100人くらいの差が出てきます(-_-;)

 

たとえ、大部分の人には悪影響がないとしても。

もしかすると、自分死ぬ可能性が「ちょぴっと」高くなっているかもしれない。

そんな、ロシアンルーレットを、自分からお金を出してやる意義は、どれくらいあるでしょうか?

 

ちなみに、サプリメントで死亡率が高くなるという結果については、「抗酸化ビタミン」の臨床試験が有名です[5]。


  • 抗酸化作用
  • ビタミン

どちらも、健康に良さそうなイメージですね。

聞こえが良い単語です。

「抗酸化作用」というのは、一般的にがん(癌)を予防するとよく言われている作用です。

 

抗酸化ビタミン(βカロテン、ビタミンE、高用量ビタミンA)を飲むことで、 長生きすることを期待して行われた臨床試験ですが。

逆に、死亡率か高くなってしまうということがわかった、大規模な試験たちです。

 

前述と重複しますが、以下のような有害な作用が確認されています。

  • 死亡率が高まる[5][9]
  • 心筋梗塞が高まる[5]
  • 肺がんが増える[6][8]
  • 膀胱がんが増える[7]
  • 胃がんが増える[8]
  • 脳出血が増える[10]
  • 骨折が増える[11]

今さらですが、[ ]の番号は、論文を示しています。

記事最後の【参考文献】から、該当の論文にたどり着けます(*^^)v

5. 飲んでも良いサプリメントはないの?

「ビタミンD」のサプリメントに関しては、賛否両論があります[12]。

「転倒」とか「骨折」に対する効果に、効果があるという結果があります。

でもでも。効果がないというデータも存在するのです。

著者は、「今後の更なる調査が必要」と指摘しています。

 

また、例えば、米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)は、こんな勧告を出しています。

妊娠可能な女性に対して、0.4~0.8mgの葉酸が含まれるサプリメントを毎日摂取すべき[13]

 

今回お話しした論文は、こういう論文です。


健康な人や、今は病気でない人が、ビタミン・ミネラルのサプリメントを飲んだら、病気を予防できるか?」


この命題に対しては、否定的な研究結果(データ)が溜まってきたということです。

 

ただし。

サプリメントのデメリットよりも、何かの成分を補充するメリットの方が大きい場合。

例えば。


  • 今病気を持っていて、それが何かの栄養素が足りないことが原因の場合。
  • 特別な状態で、特別な栄養素が必要な場合。

そういうときは、足りない栄養素を補充するために、サプリメントを飲むということは、一つの選択肢でしょう。

 

でもでも。

そういうときは、お医者さんの指示に従わなければなりませんね。

自分の判断で、もしくは周りの人のススメで、その辺の薬局やコンビニで買って飲んではいけません。

6. まとめ

マルチビタミンやミネラルのサプリメントのデータが示したこと。

それは、以下の通りです。

  • これまでに多くの研究をしてきたものの、明らかに健康・長生きに良いという効果をいまだに示せていない
  • 副作用の恐れがある。死亡率が高まる可能性もある。
  • (妊婦さんの葉酸など)一部の条件下のみ、サプリメントが推奨される場合があるので、医師の指示に従うこと

 

この結論に対して、サプリメント推奨派は、こう主張するかもしれません。


  • 効果が期待できるというデータも、中にはあるしぃ!
  • 「無効」だと証明されているわけじゃないしぃ!!
  • 副作用の可能性はとても低いんじゃん!

 

個人の自由ですから、飲むと言うのを止めることはできません。

でもでも。

  • デメリットよりもメリットの方が大きいのか
  • お金を払って飲み続ける価値があるものか。

こういう観点で、信頼性が高い研究結果(データ)に基づいて、考えてもらえればウレシイです。

メリットとデメリットを考えるときは、以下の3つが大切です!

  • サプリメントの効果(健康・長生き効果をゲットできる確率)
  • サプリメントの安全性(副作用が起こる可能性、副作用の重さ)
  • 今の健康状態(今どれくらい必要なのか)

 

ちなみに、データに基づいた私の見解は、以下の通りです。

(否定的なデータがほとんどの)サプリメントを買うくらいなら、 健康に良いというデータがある食べ物を買ってちゃんと食べてください。

 

何度も言いますが、誤解がないようにもう一度申し上げておきます。

今回お話しした結果は、「健康な人を対象に確認されたサプリメントの効果」ですね。

この結果は、病気の人も含めてすべての人に当てはまるわけではありません。

また、過去に検討されていない、すべてのサプリメントをも否定するものではありません。

 

理解していただいていればウレシイのですが。

今回の話を総括すると、こういうことですね(^^♪

「健康な人」「今は病気ではない人」が、予防のために、自己判断で、ビタミン・ミネラルサプリメントを飲むことは、これまでのデータを見る限り、勧められない。

 

もし、今後ビタミンやミネラルのサプリメントを飲むことを考えているのであれば。

この記事をふまえて、メリットとデメリットを十分に考えた上で判断されることを願っていますm(__)m

【参考文献】

[1] Ann Intern Med. 2013;159(12):850-851.
[2] Ann Intern Med2013,159;824-834
[3] Ann Intern Med2013,159;806-814
[4] Ann Intern Med2013,159;797-804
[5] J Natl Cancer Inst. 2004;96(23):1743-1750
[6] N Engl J Med. 1996;334(18):1150-1155
[7] Nutr Cancer. 2011;63(8):1196-1207
[8] Int J Cancer. 2010;127(1):172-184
[9] Lancet. 2003;361(9374):2017-2023
[10] Arch Neurol.2000;57(10):1503-1509
[11] JAMA. 2002 Jan 2;287(1):47-54.
[12] Ann Intern Med. 2013 May 7;158(9):691-6.
[13] JAMA Network(最終閲覧日:2018年11月23日), https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2596300

おわり。