食品添加物の安全性(後編)

食品添加物の安全性(後編)

前回の記事では、以下のようなお話しをしましたね。

  • どんなものでも、食べすぎると毒になりますよ
  • 食べ物の安全性を考えるには、「量」を考えないとダメですよ

 

この前回のお話は、今回の記事のためにあります。

そうです。

今回の記事こそ、「食品添加物の安全性」の本質なのです!

ちょっと大げさに表現してみましたが。

まあ、今回の記事では、そんなお話をします♪

1. 食品添加物の安全性は、こうやって決められます

読者の中には、ご存じの方も多いと思いますが。

食品添加物には、「基準値」が定められています。

 

この「基準値」までにおさまるように使いましょうね。

という数値です。

もちろん、安全を考えて、摂り過ぎないようにするためです。

 

これを少しでも超えるようなことがあると、日本ではこうなります(>_<)

マスコミが大騒ぎ
 ↓
国民が大騒ぎ
 ↓
即回収
 ↓
即廃棄
 ↓
食品加工業者がマスコミに追及されて謝罪

こういう流れに乗ってしまいます(>_<)

 

それでは、この「基準値」は、どのように決められるのでしょうか?

一般的な決まりかたをお話しします。

 

食品添加物が、まだ、どれくらい安全かどうかがわからない段階のとき。

人間を対象にして人体実験するわけにはいきません。

なので、「細胞」や「動物」を使って、実験をします。

 

実験には、いろんな種類があります。

以下のような実験です[1]。

  • 反復経口投与毒性試験(長期間投与して毒性を調べる)
  • 繁殖試験(妊娠親の生殖機能やこどもに影響があるかを調べる)
  • 催奇形性試験(妊娠親に投与して、奇形のこどもが生まれないか調べる)
  • 発がん性試験(長期間投与して、発がん性があるかどうかを調べる)
  • 遺伝毒性試験(遺伝子に影響するかどうかを調べる)

他にもいくつかありますが。

こういう実験を必ず行いなさい!

ということが、義務付けられているのです。

少しでも足りない場合は、国が使用を許可しません。

 

ちなみに。

上記で、「投与」という言葉を使いました。

ここで「投与」というのは、動物に食品添加物を食べさせるということです。

低濃度~高濃度まで、何段階も濃度設定して、動物に投与します。

例えば。

  • 1ppm
  • 10ppm
  • 100ppm
  • 1000ppm
  • 10000ppm

という5段階を設定するとしましょう。例えばです。

(ppmとは濃度の単位で、1ppm=0.0001%です)

 

そして、動物で毒性が現れ始める濃度が1000ppmからだとしましょう。

つまり、こういうことです。

  • 1ppm:毒性認めず
  • 10ppm:毒性認めず
  • 100ppm:毒性認めず
  • 1000ppm:毒性あり
  • 10000ppm:毒性あり

 

ここで「毒性」というのは、動物に好ましくない状態があらわれることです。

もちろん、「発がん」も含みます。

 

このとき、毒性が認められた1000ppmの1段階下の濃度:100ppmを使います。

この濃度を「無毒性量」といいます。

この「無毒性量」である100ppmまでは、毒性が認められなかったということですね。

 

また、動物実験は、いくつかの動物を使って行われます。

そして、一番感受性が高かった動物(より低濃度で毒性が出た動物)の結果が採用されます。

例えば、「無毒性量」が


  • ウサギでは1000ppm
  • マウスでは100ppm

だったとき。

より感受性が高かったマウスが採用されるわけです。

 

そして、人間に使うときは、安全性を考えて、この「無毒性量」を100分の一にした濃度にします。

この例だと、「無毒性量」100ppmの100分の一なので、1ppmということですね。

この人間用に当てはめた1ppmを「最大許容摂取量」といいます。

 

そしてさらに!安全性を十分過ぎるほど考えて、さらに少なくします!

まず、日本人が、該当する農産物を食べる平均的な量を確認します。

根拠とするデータは、「国民栄養調査」から持ってきます。

そして、上記で求めた「最大許容摂取量」 (1ppm)より、さらに低くなるように設定します。

 

ただ、一番多いときでも、「最大許容摂取量」 (1ppm)の80%までとされています

(上の例の場合だと最大でも0.8ppm)。

実際は、多くの食品で、もっともっと、はるかに低い量にされています。

 

このようにして、「基準値」が決められます。

この「基準値」は、人間が食べて、安全性に問題ないと考えられる濃度よりも、さらにずっとずーっと低い濃度ということがわかりますでしょうか。

2. 実際に摂取している食品添加物はどれくらい?

実際に摂っている食品添加物が、どれくらい「基準値」より低いのか、見てみましょう[2]。

食品添加物名 用途 一日許容摂取量に対する、実際の摂取量の割合(%)
アスパルテーム 甘味料 0.13%
安息香酸 保存料 0.64%
ジブチルヒドロキシトルエン 酸化防止剤 0.09%
硝酸塩 発色剤 103%
黄色5号 着色料 0.04%
ソルビン酸 保存料 1.57%

一番右列の%を見てください。

私たちが実際に食事で摂っている食品添加物が、許容量よりどれだけ少ないかという数字です。

 

例えば。

一番上の「アスパルテーム」は、0.13%となっていますね。

この「アスパルテーム」の許容量が、上の例のように1ppmだとしましょう。

そのとき、実際に食事で摂っているのは0.0013ppmということです。

 

ということは、上の例に当てはめると。

  • 動物で毒性が出た量:1000ppm
  • どの動物でも毒性が出なかった量(無毒性量):100ppm
  • 安全性を考えて100分の一にした量(許容摂取量):1ppm
  • 私たちが実際に食べている量:0.0013ppm

つまり、私たちが普段食べているアスパルテームは、どの動物でも毒性が出なかった量(無毒性量)のわずか0.0013%(10万分の一くらい)ということですね。

「硝酸塩」が「103%」となっていますが、これはほとんどが野菜にもともと含まれている「硝酸塩」です。

食品添加物として加えた量は、他の添加物と同じく、本当にごくごくごくわずかなのです。

そうです。野菜にも、食品添加物と同じ成分が含まれているのです。

私たちが普段食べている食品添加物が、いかに超超微量であり、安全が確保された量であるということがわかりますでしょうか?

3. 食品添加物の安全な量は、こんな感じで考えましょう(*^^)v

しばしば、こういうことを聞きます。


  • 食品添加物は動物でしか実験してない。人間の安全性は確認されていない。だから危ない。
  • 医薬品は、動物実験の次に人間でも試験をするのに。食品添加物は人間で試験をしてないから危ない。

 

食品添加物と医薬品の違いは何でしょうか?

それは、こういうことです。

  • 食品添加物:体に何か作用が出てはいけない。
  • 医薬品:体に何らかの期待する作用が出なければならない。

 

食品添加物は、絶対に安全でないといけません。

体に有害な反応が出てはいけないのです。

なので、「害が出る量」と「害が出ない量」を見極めるために、「どのへんで害が出るか?」を動物で特定する必要があるのです。

前述しましたが、「毒性が出る量を確認する実験」を人間でするわけにはいきません。

なので、食品添加物では。

  1. まず、動物実験で毒性が出ない量を確認。
  2. そして、人間用に、絶対に安全な量まで超絶減らして使う

というやり方をするのです。

 

「食品添加物は動物でしか実験をしていない。人間の安全性は確認されていない。だから危ない。」

という人がいると前述しましたね。

そのような人は、「動物実験で使った濃度」と「人間で採用している濃度」が、天と地ほど違うということを、あきれるほどあっさりスルー(無視)しています。

 

一方。

医薬品はどうでしょうか?

医薬品は、病気を治すことが目的なので、体に反応がでるほどの量を使います。

「病気を治す作用」だけでなく、「副作用」(動物で言う「毒性」)も出やすい量と言えます。

なので、動物だけではダメなのです。

人間を対象に、厳密に、とても厳密に、「効果」と「安全性」を評価して、絶妙なバランスで使える量を見極める必要があるのです。

食品添加物と医薬品を同じように考えてはいけないことがわかりましたでしょうか?

 

ちなみに、動物(ネズミ)への「反復投与毒性試験」「 発がん性試験」は、1~2年間、毎日続けます。

これは、動物(ネズミ)の通常の寿命です。

つまり、動物(ネズミ)に、生涯の間、食品添加物を食べさせたときに毒性が出るかどうかを見ているわけです。

 

このような事実から考えられること。

人間が、この食品添加物を、生涯にわたって、毎日毎日、欠かさずに食べ続けたとしても、健康に問題ないと考えられるわけです。

「食品添加物のカタマリ」と悪意をもって言われているカップヌードルを毎日食べたとしても。

栄養面は置いておいて、食品添加物だけの影響で健康被害が起こるということはありません。

繰り返しますが、栄養面は置いておいたときの話ですよ!

 

実際には、食品添加物とは関係なく、必要な栄養素を摂れないというのは確かですね。

そういうわけで、

「カップヌードルだけだと不健康」

というのは間違いではありません。

ただ、繰り返しますが、食品添加物による健康被害とは何の関係もありません。

 

ともかく、こうして食品添加物の「基準値」が決まるのです。

「この添加物は、動物で発がん性が確認されたので、絶対に食べてはいけません!」

という本をよくみかけますが。

この記事を読んだ読者はわかりますね。

「発がん性が認められた添加物」だとしても、それは超高濃度を動物に投与したときのこと。

使われているのは、人間が毎日毎日一生涯食べ続けてもがんにはならないくらいの、超絶少ない量なのです。

 

また、このような、「動物と人間の間には、100倍の差を設定している」ことを使って、

「基準値とは、100倍を食べたら死ぬ量だ」と言っている人もいます。

これも、間違っていることがわかりますね。

 

「食品の裏側」という、ベストセラーになった本をご存じでしょうか?

食品添加物が怖い怖いと煽り立てている本です。

その本に、以下のような記述がありました[3]。


「添加物として使っていいかどうかや使用料の基準がそのネズミでの実験結果に基づき決められているのです。

ネズミにAという添加物を100g使ったら死んでしまった。じゃあ、人間に使う場合は100分の1として、1gまでにしておこう』大雑把に言えばそのように決めているのです」


 

今日の記事を理解された読者はわかりますね。

これは、明らかに間違いです。

上の例で考えると。

  • 1000ppm:動物で毒性を確認
  • 100ppm:動物で毒性なし(無毒性量)
  • 1ppm:最大許容摂取量
  • 0.8ppm 未満:実際に使われる上限
  • 0.0013ppm(アスパルテームの場合):基準値

でしたね。

この例に当てはめると、このベストセラー本では、100ppm が致死量だと言っています。

全然ちがいます。

100ppm は、どの試験でも、どの動物でも、ちょっとも毒性が認められなかった量です。

 

こういう、とても大切なところでウソを書くようなカスみたいな本が、ベストセラーになっているという、がっかりする現実を、知っていただきたいです。

この本では、他にも、添加物の危険を煽るようなウソをたくさん書いています。

また別の機会に、それらの誤りをただす記事を書かせていただきますm(_ _)m

 

あともう一つ。

読者が疑問に思っているかもしれないことをお話ししておきます。

この記事では、安全かどうかは「量」しだいだと言いました。

一方、前回の記事では。

もし食品添加物がなければ、発がん性などがある「カビ」が発生する!

と言いました。

 

なんで、食品添加物に対しては、「量」の話をするのに。

「カビ」に対しては、「量」の話をしないのか?

そう思っている読者もいるのではないでしょうか?

 

その理由はこうです。

食品添加物は、「量」のデータをしっかり出して、発がんのリスクをしっかり制御しています。

「この量なら食べても問題点ないっすよー」

というのを、データに基づいて決められるのです。

 

それに対して、「カビ」はどうでしょう?

食品添加物を使わなかった食品で、「カビ」がどれくらい増えているのか?

制御できないのです。

当然です。

放置した時間が長くなればなるほど、「カビ」はどんどん増えるのですから。

こういう、「量」の制御ができないものは、最初から避けるしかありません(-_-;)

 

食品添加物の安全性と、自然に増える毒性物質の安全性。

この両者の違いを区別することが大切です。

4. まとめ

今回は、食品添加物の安全性についてお話ししました。

大切なことは、こういうことですね。

  • 食品添加物の安全性は、「量」を考えて判断するんだよ(*^^)v
  • たくさん食べれば何でも毒になるんだよ。食品添加物だけではなく、食品自体も同じだよ(^^;)
  • 食品添加物は、毒性が出ないくらいの、とーっても少ない量でしか食べられないようになっているんだよ(^^♪

 

でもでも。

実は、この記事で一番言いたかったことは、やっぱりこれなんです(^^;)

「感覚やイメージで判断しないように!!」

 

【参考文献】
[1] 内閣府食品安全委員会ウェブサイト(最終閲覧日:2018年12月26日),http://www.fsc.go.jp/koukan/risk-okayama210313/risk-okayama_210313_siryou2.pdf
[2] 内閣府食品安全委員会平成18年度食品安全確保総合調査「食品添加物の複合影響に関する情報収集調査報告書」, 平成19年3月, 株式会社 三菱総合研究所
[3] 食品の裏側、東洋経済新報社

おわり。