子宮頸がんワクチンが窮地にあるという現実(後編)

子宮頸がんワクチンが窮地にあるという現実(後編)

前回の記事で、子宮頸がんについて、以下のようなお話をしましたね。

  • 子宮頸がんは、比較的高い確率で発症する
  • 子宮頸がんは、死亡する可能性も比較的高い
  • 助かったとしても、子宮を切除すると子供を産めなくなる可能性がある
  • でも、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)で予防できる

 

前回の記事はコチラ→子宮頸がんワクチンが窮地にあるという現実(前編)

前回の記事を見ていただければわかりますが、上記は、信頼できるデータです。

  • 国立がん研究センターによる疫学データ
  • 信頼できる方法で実施された臨床試験の結果

このように、科学的根拠に基づいた知見なのです!!

ふつう考えると、「なるほど!じゃあ、ワクチン接種は絶対必須だね♪」

となるはずです。

 

ところが、そうならないのです、今の日本では・・・(>_<)

なぜ、そうならないのでしょうか?

今回は、日本のあきれた現状をお話しします。

 

1. 日本では、こんな状態になっています・・・

海外では多くの国で、すでに子宮頸がんワクチン接種が導入されています。

世界保健機関(WHO)も積極的な接種を全力で推奨しています。

日本でも、2013年に定期接種が始まりました。

対象は、小学6年から高校1年までの女子です。

 

しかし。

ワクチン接種の副反応の報告が相次ぎました。

それを、新聞やテレビが、たくさん取り上げました。

「ワクチンの効果」よりも、「副反応が危ない」という話題をたくさんたくさん報道したのです。

 

それだけではありません。

一部の専門家も、このワクチン接種の副反応を問題視し始めてしまいました(>_<)

子宮頸がんワクチンを普及していこうとした矢先に、激しい向かい風にあってしまったのです。

 

そして。

厚生労働省は、2013年6月に、積極的な接種を中止しました。

今もその状態です(>_<)

 

2. 子宮頸がんワクチンに否定的な流れの一因。それは「マスメディアの偏った報道」です!

なぜこのような事態に陥ったのでしょうか。

帝京大学ちば総合医療センターの医師、津田健司氏は、こう言っています。

「2013年3月、朝日新聞に掲載された1本の記事が契機になった」

東京都内の女子中学生について報じた記事です[1]。

 

抜粋した記事をご覧ください。

「(ワクチン接種後)接種した左腕がしびれ、腫れて痛む症状が出た。症状は脚や背中にも広がり入院。今年1月には通学できる状態になったが、割り算ができないなど症状が残っているという」

この記事を契機に、副反応を問題視する記事が、次々と報道されたとのことです。

 

マスメディアは、「子宮頸がんワクチンの効果」よりも、「副反応」を多く取り上げ、ワクチンに否定的な報道ばかりしている。

そう言ったら、信じられないでしょうか?

これには、根拠があるのです。

 

上述の津田氏による論文を見てみてください[2]。

津田氏は、大手全国紙5紙(読売、朝日、毎日、日経、産経)が、子宮頸がんワクチンに関して報道した記事を「すべて」抽出しました。

期間は、「2011年1月から2015年12月まで」です。

ワクチン問題が話題になった時期をカバーしていますね。

 

それを2人の医師が、話し合わず、別々にすべて読みました。

一人の医師の主観や思い込みで選ぶのを避けるためです。

具体的な方法については、論文で確認できます[2]。

そして、子宮頸がんワクチンに対して、以下の3段階で評価しました。


  • 「肯定的」
  • 「中立」
  • 「否定的」

 

また、それとは別に、記事の内容を以下のように分類しました。


  • ワクチンの効果に関する記事
  • 副反応に関する記事
  • 専門家からの提言が含まれている記事

 

その結果は以下の通りです。

  • 2013年3月を境に、医師がワクチンに対して「肯定的」と評価する報道は激減
  • 「否定的」もしくは「中立」と評価した記事がほとんどになる
  • 「子宮頸がんの予防効果」についての報道が激減
  • 「副反応などのリスク」を取り上げる記事が圧倒的多数を占めるようになる

あまりにも!偏った報道だと言わざるを得ません(>_<)

 

以前もお話ししましたが。

マスメディアは、センセーショナルな話題を好んで発信します。

以前の記事はコチラ→信頼性が高いのはどれか?(論文、学会、書籍、テレビ、新聞)(③書籍編)

 

私たちも。

「ふーん。そりゃそうだよね。」って、ふつうに受けとめるような話題より。

「マジか!?知らんかった!!」ってなるものに興味を持ちますね。

マスメディアが、そんなセンセーショナルな話題ばかり発信するのは、私たち国民が、そういうのを求めているからです。

 

私たち国民にも、原因があるのです。

私たちは、健康情報の真偽を見抜けるように、もっと賢くならないといけません。

とはいえ、一番悪いのは、やはりマスメディアです。

国民の考え方を、一方向に偏らせるようなマスメディアの報道は許せません( ゚Д゚)

 

このように、ワクチンに否定的な報道ばかりされたら、どうなるでしょうか?

その記事を見た視聴者は一層、こう考えるようになるでしょう。


  • 子宮頸がんワクチンの接種を避ける。
  • 既に接種した人やその親は、接種後に現れたいろんな症状を、ワクチンに結びつけてしまう。

 

ワクチンの副反応に関しては、インフルエンザワクチンに関する記事でも書きましたが。


  • その副反応は、ワクチンによって起こったものなのか?
  • その副反応は、ワクチンを接種しなくても起こったことなのか?

この区別が非常に難しいと言えます。

以前の記事はコチラ→予防接種否定論がある理由

 

今、ワクチンの副反応とされているものの中には、「ワクチンが真の原因でないものが含まれている可能性」についても議論する余地があります。

実際に、厚生労働省研究班(祖父江班)が行った全国疫学調査でも、こういう報告があります[3]。

「HPVワクチンを接種していない人でも、接種した人が訴えている症状と似た症状が見られる」

 

ここで一つ申し上げたいことがあります。

私は、ワクチンの副反応を軽視してもいいと言っているのではありません。

ワクチンの副反応とされる症状で苦しんでいる人がいることはとても重大な問題です。

ワクチンが原因かどうかに関わらず、ワクチン接種後に起こった症状のために、実際に苦しんでいる人がいることはまぎれもない事実です。


  • ワクチンに対して、できるだけ正確な情報を提供すること。
  • 接種後に症状が現れた人に対して、十分に治療を受けられるような医療体制。

こういうのが、今の日本では十分に整備されていません。

このような状況も、この問題に影を落としていることは否めません。

 

一方で。

多くの人が、子宮頸がんで苦しみ、毎年死亡している事態も同様に重大な問題です。

前回記事の通り、「毎年1万人が新たに子宮頸がんを発症し、毎年3000人が死亡している」のが今の状態なのです。

このような状況は、どうやっても放置できません。

 

なのに、日本のマスメディアは。

  • 子宮頸がんで多くの女性が苦しんだり、死亡していることを取り上げず。
  • 子宮頸がんの予防効果が示されているワクチンの有効性をたいして取り上げず。
  • 副反応の問題ばかり報道する。

こういうことをしているのです。

 

ワクチンの副反応で苦しんでいる方がいるのは事実でしょう。

その観点で、逆側も、もっともっと考える必要があるのでは?

つまり。

  • 子宮頸がんになってしまった女性たち。
  • 抗がん剤で苦しみながら闘病している女性やその家族。
  • 不幸にも亡くなってしまった女性やその家族。
  • 手術に成功したものの、子宮全摘して子供を産めなくなった女性やその家族。

毎年1万人が発症する病気です。

家族を含めると、毎年数万人~数十万人も、このような不幸なことを経験しているかもしれないのです。

 

この許容できない状態を改善し得るワクチンが目の前にある状態で、今すべきことは何でしょう?

それは、こういうことを考えることではないでしょうか。

  • ワクチンの「効果」と「安全性」の両面を机に並べ、利益と不利益を、データに基づいて「客観的に」評価すること。
  • 安全性の問題が起こったときには、どのようにして被害に遭った人や家族のケア・救済ができるか。

子宮頸がんワクチンに対する今のマスメディアの姿勢は、あまりにも片方に偏り過ぎています。

どう控えめに見積もっても、中立とは言えません。

 

3. こんなにある!子宮頸がんワクチンを貶めているマスメディアの罪

話は少し逸れますが(実は逸れていませんが)、マスメディアの罪深き事例をもう少しご紹介します[4]。

子宮頸がんワクチンの安全性については、一部の専門家も問題を指摘しました。

その内容は、以下のとおりです。

 

厚生労働省が、池田修一氏を班長とするグループに、子宮頸がんワクチンの副反応の研究を依頼しました。

そして、池田氏が報告した結果は、

「マウスに子宮頸がんワクチンを接種すると、体内で自己抗体が作られて、自分の脳を攻撃する」

と主張するものでした。

 

つまり、ワクチンは危険で脳に悪影響を及ぼすという主張です。

この主張は大手メディアで報道されました。

しかし、その後、村上璃子氏というジャーナリストによって、「そのデータが捏造ではないか」との疑惑が持ち上がります[5]。

そこで、池田氏が所属する信州大学で調査委員会が発足して、池田氏のデータが検証されました。

 

その結果はどうなったでしょうか?

データの捏造は認められませんでした。

しかし。

池田氏の結果は、マウス1匹のみのデータなのでした(-_-)

また。

調査委員会が池田氏と同じ方法で実験しても、同じ結果を再現できなかったのです( ゚Д゚)

そして、池田氏の主張は「極めて不適切である」という判断に至りました

(ここで挙げた以外にも問題点は見つかりましたが割愛します)

この調査結果から、厚生労働省は、「池田氏に対し、混乱を招いたことについて猛省を求める」と批判しました。

 

ところが。

これに対して朝日新聞が報道した記事は、どのようなものだったと思います?

朝日新聞の報道は、「不正認められず」というものでした。

また、池田氏の「捏造がなかったことを実証していただき、安堵しました。」というコメントを載せたのです。

 

「はぁ!?」

「バカか?」

と思いませんか?

驚くべき記事です。

これでは、池田氏のデータに大きな問題がなかったと解釈されてもしょうがありません(T_T)

といいますか、あえて、そのような解釈に導くような記事にしたとしか言いようがありません。

 

子宮頸がんワクチンに対するマスメディアへの不信感は他にもあります。

国連の世界保健機関(WHO)が、2015年12月22日、子宮頸がんに対する声明を出しました[6]。

その中で、日本が子宮頸がんワクチンの積極的な接種を見送っていることに対して、以下のように強烈に批判しました。

「薄弱な根拠に基づいた政策決定によって、真の被害をもたらす」

日本は、世の中で子宮頸がんワクチンの有用性が確認されているにも関わらず、「積極的にワクチン接種を推奨しない」という政策を取っている状態です。

それに対して、世界保健機関から、非常に強い言葉で非難されているのです。

言い換えると。

日本では、「救えるはずの命が、ただ失われていくのを放置している」と非難されているのです。

 

これは、政府の本心ではありません。

「積極的なワクチン接種は、国民の支持が得られない」という状況なので、しかたなく積極推奨していないのです。

 

さらに言えば、アメリカやヨーロッパの規制当局(米国疾病予防管理センターや欧州医薬品庁)でも、子宮頸がんワクチンが「安全」で「極めて効果的」であるとの声明を出しています[7][8]。

しかし、日本の大手マスメディアは、このような事実を大きく報道しません(一部の非大手メディアを除く)。

みなさんは、このような状況を、どれくらい知っているでしょうか?

  • 世界では、日本の状況と違って、子宮頸がんワクチンの有効性と安全性について一定のコンセンサスが得られていること
  • 日本は、子宮頸がんワクチンを積極推奨しないことに対して、世界保健機関から非常に強く非難されていること

知らないのも、無理はありません。

マスメディアが、報道しないのですから(T_T)

 

最近も、「マスメディアの罪深い偏った報道」を感じさせることがありました。

本庶佑(ほんじょ たすく)さんという人が話題になりましたね。

がん(癌)の免疫療法を発見して、昨年(2018年)、ノーベル医学生理学賞を受賞しました。

受賞当時、マスメディアは、こぞって、本庶さんのインタビューを報道していました。

 

その本庶さん。

記者会見で、子宮頸がんワクチンの問題に対して、警鐘を鳴らしました。

具体的には、以下のような内容をお話しされました。

「子宮頸がんワクチンの副作用というのは一切証明されていない。日本でもいろいろな調査をやっているが、因果関係があるという結果は全く得られていない。厚労省からの(積極的接種)勧奨から外されて以来、接種率は70%から1%以下になった。世界で日本だけ若い女性の子宮頸がんの罹患率が増えている。一人の女性の人生を考えた場合、これは大変大きな問題だ。マスコミはワクチンによる被害を強く信じる一部の人たちの科学的根拠のない主張ばかりを報じてきた」

 

また、マスメディアに対して、こう批判しました。

「このことに関し、はっきり言ってマスコミの責任は大きいと思う。大キャンペーンをやったのは、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞。メジャーなところが全部やった。そしてNHKも責任の一端があると思う。今からでも遅くないから、きちんと報道してほしい。実害が生じている」

すばらしい(*^^)v

まったく同感です(^^♪

本庶さんは、熱く語り、30分の記者会見のうち、7分間も、子宮頸がんワクチンの現状の問題点を指摘したのでした。

 

ところが。

みなさん、本庶さんがこのような発言をしたことを知っていますか?

そうです。

大手のマスメディアは、この内容を、一切報道しませんでした。

そうです。

シカトしたのです( ゚Д゚)

信じられますか?

この愚かな行為を。

 

あれほど、どの新聞でも、テレビでも、本庶さんの記者会見をトップニュースで扱っていたのに!

30分中7分も話した話題を、どの新聞でも、どのテレビでもカットする!?

偶然なんてありえません。

意図があってカットしたとしか考えられません。

これまで、自分達(マスメディア)が報道してきた路線に沿わない内容は、パタンとフタを閉じてしまう、ということでしょうか?

彼らには罪の意識がないのでしょうか!?

ちなみに、上記の本庶さんの記事は、「朝日」でも「毎日」でも「読売」でもなく、「m3.com」という、医療専門サイトから得られました[9]。

 

私は、考え方というものは人それぞれであり、誰かの主張を、公に向かって非難したいとは思いません。

しかし、強い発信力・影響力を持つメディアとなると、ワケがちがいます。

意図的に国民を一方向の解釈に導くような行為に対して、そして著しく非倫理的な態度に対して、非常に強い失望感と憤りを覚えます。

僕は怒ってるんです( ゚Д゚)

 

何度も言いますが、私は、副反応の問題を軽視して良いとか報道するなと言っているわけではありません。

「副反応だけでなく、もう一方のワクチンの有用性についても、しかるべき情報を適切に報道して、利益と不利益の両面を合わせて議論すべき」

と言っているのです。

「とても多くの人たちが、子宮頸がんで苦しんでいるという問題も、考えるべき」

と言っているのです。

 

「薬」や「ワクチン」には、必ず副作用(副反応)があります。

必ずです。

それでも存在するのは、不利益を上回る価値があると期待できるからです。

ところが、マスメディアの姿勢は、許せないほどに偏っています。


  • 一方(ワクチンの副反応)の情報(感情的情報)ばかりを報道する
  • もう一方(ワクチンの有用性)の情報(科学的情報)が、世の中にたくさんあるのに、軽視(無視)する

てな具合です( ゚Д゚)

 

どうやったら、マスメディアの偏った報道をただすことができるのでしょうか?

子宮頸がんワクチンに対する偏った報道に対しては。

世界保健機関(WHO)でも。

欧米の規制当局でも。

ノーベル医学生理学賞の受賞者ですら。

マスメディアは聞く耳を持っていないようです。

誰か、マスメディアが中立な報道ができるようにする方法を教えてくださいm(__)m

 

4. まとめ

この記事を見て、ワクチン接種後の症状に苦しむ方やその家族は、憤りを感じられるでしょうか?

「苦痛の現場を見ていないあなたに何がわかるのか?」と。

そう思いつつ、あえて書きました。

私はもう一方の、子宮頸がんで苦しんでいる方やその家族を無視できません。

そして、科学的な判断とは、感情に基づいた「主観的」な判断ではなく、データに基づいた「客観的」な判断であるべきだからです。

どちらの意見も無視せず、両方を俎上(そじょう)に乗せて、偏らず、科学的に、議論されることを願っています。

 

なお、子宮頸がんワクチンに関しては、いろんなデマがあります。

例えば。

  • ワクチン接種すると不妊になる
  • ワクチン接種すると自閉症になる

異常な状態です。

これらについては、一考する価値もないデマだということを、おいおいお話ししていきます。

【参考文献】
[1] http://www.asahi.com/area/tokyo/articles/MTW1303261300002.html
[2] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=%22Clinical+infectious+diseases+%3A+an+official+publication+of+the+Infectious+Diseases+Society+of+America%22%5BJour%5D+AND+2016%5Bpdat%5D+AND+Tsuda+K%5Bauthor%5D&cmd=detailssearch
[3]http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagaku
ka-Kouseikagakuka/0000147016.pdf
[4] http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/tp170331.html
[5] http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6418
[6] http://www.who.int/vaccine_safety/committee/topics/hpv/en/
(このサイトにある2015/12/17付けのStatementです)
[7]

http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2015/


11/news_detail_002429.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1
[8] https://www.cdc.gov/vaccines/vpd/hpv/hcp/recommendations.html
[9] m3.comウェブサイト(最終閲覧日:2019年1月22日),https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/647152/

おわり。