人生が楽しいほど長生きするって本当の本当なのか?

人生が楽しいほど長生きするって本当の本当なのか?

感覚的には、幸せな人ほど長生きしそうな気がします。

幸せだなぁ
 ↓
ストレスが少ない
 ↓
ストレスが原因の病気に罹りにくい
 ↓
死ににくい

みたいなイメージ。

当たり前のようなことを、「本当かな?」と疑うことは大切ですよね?

と、誰かが言ってました。誰だか忘れました。

 

「幸せ=長生き?」ということを、ちゃんと確かめようとした人は、実はたくさんいるんですねー。

しかし、意外なことに、これまで一貫した結果が得られていないんです。

特に、2015年に報告された大規模な調査の結果はこうでした。

「幸せな人の死亡リスクは、不幸な人と変わらない。」

不幸な人にとっては朗報てすか?いやいや、どうでしょう。

 

という前置きをしておいて何なんですが、今回お話しするのは、こういう論文の結果です。

「幸せな人ほど長生きする」

結局どうなの?

本文を見てみてください!

(結果だけみたい場合は「3.まとめ」を見てください。でも最初から読むのをオススメします!)

1. 幸せ=長生きではない?2015年の調査結果

この調査は、イギリスで約70万人の女性を対象に実施された「観察研究」です[1]。

「幸せを感じる頻度」を、以下の4段階で調査して、幸せと不幸が分類されました。


  1. ほとんどいつも
  2. たいてい
  3. 時々
  4. ほとんど又は全く感じない

その結果、不幸な人が死亡率が高いという結果は得られませんでした。

また、この結果は、がん(癌)、心臓疾患など、死因別でも、同様でした。

論文の著者は、「幸せな人が長生きするとは言えない」と結論付けています。

 

ところが、この調査方法には、少し問題点がありました。

つまり、こんな手順です。


最初に幸福度の質問をする
 ↓
その後の死亡の有無を調査する

以上。


これ、問題ありありですよね?

「最初の質問以降に幸福度が変わった人はどうするの?」

ということです。

例えば、

最初の質問:幸せだなぁ(^^♪

その後:会社で解雇。離婚。うわぁぁ(>_<)

こういう人は、この調査では「超幸せな人」なのです。

途中の幸福度はまったく考慮されていませんでした。

これじゃあわかりませんよねー。

2. 幸せ=長生き!最近の論文

そこで、今回お話しする論文では、幸福度の質問を2年ごとに3回、6年間追跡調査されました[2]。

そして、質問ごとにスコアをつけ、2つのグループに分けられました。

  • スコアが高い「人生が楽しいグループ」
  • スコアが低い「人生が楽しくないグループ」

その結果、「人生が楽しいグループ」の方が死亡率が低下していました。

簡単に結果を示しますと、

「人生が楽しい」と答えた回数が0回だったグループの死亡率が1とすると、

  • 「人生が楽しい」と2回答えたグループの死亡率:0.83
  • 「人生が楽しい」と3回答えたグループの死亡率:0.76

つまり、こういうことです。

「人生が楽しいと答えた人の方が死ににくい」

論文では、以下のような図で結果が示されました。

人生が楽しいほど長生きするって本当の本当なのか?

縦軸が生存率、横軸が年数です。

どの線も、年数が経過するほど生存率が低くなっていってます。

当然ですね。みんなちょっとずつお亡くなりになっていくということです。

 

余談ですが、この図は「カプランマイヤー曲線」といいます。

抗がん剤のような、長期に服用する薬の効果を調べる時などによく使われる図です。

覚える必要はありません。が、いろんなところでけっこう使われる、便利な図なので、

「あ、これどっかで見たことあるー!」くらいでぼやっと覚えておくといいかもしれません。

 

図を見ると、わかりますね。

前述したように、「人生が楽しい」と答えた回数が多いほど、生存率が高くなっています(^^♪

わかりやすいですねー!

 

でも、まだ安心できません。

「この結果は信用してもいいのか?」問題を考えてみましょう。

この調査は「観察研究」でしたね。

そうすると、データの解釈に注意しなくてはなりません。

 

(ここから先は、少し難しいかもしれません(・_・)結果だけ知りたい場合は、「3.まとめ」に進んでもらってもオッケーです)

この論文の著者も、「データの信頼性に問題ないか」を考えていました。

「幸せ=長生き」、逆に言うと「不幸な人は死にやすい」

という解釈に間違いはないのかと。

すなわち、論文著者は、こう考えたのです。

<可能性1>(これが真実だと思っている)

原因: 不幸だなぁ(>_<)
 ↓
結果:死にやすい
 ↓
結論:「不幸な人は死にやすい」

ということだと思うけど、もしかするとそうではなく、

<可能性2>

原因:もともと重い病気を持っている

結果:病気が辛くて不幸だなぁ(>_<)

結論:「病気で死にやすい人は不幸だ」

つまり、こういうことです。

可能性1:
先に「不幸」があって、それが原因で死にやすい(①不幸→②死にやすい)

 

可能性2:
先に「死にやすい原因」 を持ってて、そのために不幸になった(① もともと死にやすい→②不幸)

 

今回の調査で知りたいことは、「可能性1」の方ですね。

これです。

「幸福感が身体に与える影響」

つまり、

「幸せな人は長生きするか?」

「不幸せの人は死にやすいのか?」

なので「もともと死にやすい人は不幸」というのは除いて考えたいのです。

 

「観察研究」では、こういう、結果の解釈を歪めるような事が起こることがあるので、注意が必要なのです(*_*)

ちなみに、このような、原因と結果が逆転(不幸↔死にやすい)してしまうことを、「因果の逆転」と言います。

でもでも、この名前を覚える必要はありません。

ブログでは、その都度説明しますので。

 

話を戻しましょう。

この論文では、「因果の逆転」が起こっている可能性についても検討されました。

研究者からすると、この「因果の逆転」の可能性をできるだけ払拭したいのです。

まあ、完全に払拭することはできないのですが。

研究者は、もともと死にやすかった人を除くなどして解析しました。

そして、それでも結果は変わらなかったので、結論に変わりはないと判断されました。

3. まとめ

結局、科学的に検討した結果でも、やっぱり「幸せ=長生き」と思ってていいんじゃないかな、今のところは。

といったところですね。

結論のところで、著者(研究者)はこう言ってます。

「今回の結果は観察研究の結果であり、幸福度と長生きの関係を結論付けられるものではない」

「とは言え、主観的な幸福感が健康に与える影響について、理解を深める結果が得られた」

ま、そういうことです。

ちなみに、「人生が楽しい」と答えた回数は男性より女性の方が多い結果でした。

うん、わかる気がします。

 

また、他に「人生が楽しい」と答えた回数が多かったのは、既婚者、高学歴、裕福、若者、まだ働いている人等でした。

 

余談ですが、この論文の著者の一人であるのJane Wardleは、この文献が発表される前に亡くなったようです。

最後に、今回の論文の結論をサポートする、または関連する、最近の他の論文も紹介しておきますね。

  • ストレスが大きいと自覚している人は、がんのリスクが高くなる(日本人のデータ)[3]
  • 精神的な苦痛が大きいほど、がんになるリスクが高くなる(外国人のデータ)[4]

【参考文献】
[1] Lancet 2016; 387: 874–81
[2] BMJ 2016;355:i6267
[3] Sci Rep 2017; 7: 12964
[4] Batty GD, et al. BMJ. 2017;356:j108.

おわり。