信頼できる健康情報とは何か?人間を対象にした研究の方法論

人間を対象にした調査・研究

前回の記事で、「誰かがオススメする健康食品については安易に信用してはいけない」とお話ししました。

前回の記事誰かがオススメする健康食品を、安易に信じてはいけない理由

 

それでは、何を信用すれば良いのか?

それは、人間(ヒト)を対象に行われた調査や研究です

「臨床試験」「臨床研究」などと呼ばれています。

 

動物実験のデータはダメです。

人間のデータでなければダメです。

判断基準は、


「専門家が効果があると言ってた」ではなく

「人間を対象とした研究で、効果があるという結果が示されていた」


ということです。

 

見るべき点は一つだけです。

「人間のデータがあるかどうか」

これだけです。

簡単でしょう?

 

ただ、もう少し考えるべき点があります。

人間のデータなら何でも良いわけではないのです。

今回は、人間での研究結果の種類と、それらがどれくらい信用できるのか、というお話をします。

1. 人間を対象とした研究の種類

健康食品や薬に、効果があるかどうか?

それを確かめるためには、どうすれば良いでしょうか?

「飲んだとき」と「飲まないとき」を比べれば良いのです。

 

  • 「飲んだとき」の方が、良い健康状態になれば、「薬は効いた」と言えますね。
  • 「飲んだとき」と「飲まないとき」で変わらないようなら、「この薬、効いてねーな!」となります。
  • 「飲んだとき」の方が逆に悪くなったら、「この薬、やべーんじゃね!?」ということです。

 

このような方法は、これまでにたくさん研究されています。

そして、いくつかの方法が確立されています。

以下の表をご覧ください。


参照:診療ガイドライン作成の手引き2014[1]

 

これは、「エビデンスレベル」と言われるものです。

人間を対象とした研究方法の種類を、信頼性が高い順から並べたものです。

表の通り、Ⅰ~Ⅵ (1~6)までのレベルがあります。

低いレベルから説明していきましょう。

(今回のお話は、少し難しいかもしれません。なるべくわかりやすく説明しますが、今回全部わからなくてもオッケーです。なんとなく雰囲気がわかればオッケーです)

2. 信頼性が低い研究とは?

レベルⅥ(レベル6)

これは、研究というより、単なる専門家の意見です。

一般的に、人は権威のある専門家の意見を信用してしまう傾向があります。

「お医者さんが言うんだからそうなんかなー。。」みたいな。

でも、医学的に、そのような個人の意見は、たとえ専門家といえども、信頼性は最低レベルに位置付けられています。

科学者は、誰かの意見だけで信用したりはせず、データに基づいて議論するのです。

なので、「〇〇を飲めばがんが消える」とかいうような本で典型的な、データを示さず持論を展開する(自称)専門家の意見を簡単に信用してはいけないのです。

このような、巷に出回っている信頼性が低い書籍については、また今度詳しくお話ししますね。

レベルⅤ(レベル5)

ある病気を持った患者さんに対して、治療をした経過等をまとめたレポートです。

めずらしい病気に対して、有効な治療方法を見出すために、役立つことがあります。

ただ、治療効果には個人差がありますので、ある薬や食品の効果を見極めるというような場合には不向きです。

このブログの中では、あまり知らなくても良い研究方法なので、ここまでにしておきましょう。

3. 信頼性が中くらいの臨床研究とは?

レベルⅣ(レベル4)

上の表では、IVaとIVbの2つに分かれていますが。

ここでは理解しやすいように、便宜上、一つにまとめましょう。

これらは「観察研究」と言います。

 

グループAとグループBを比較するようなとき。

例えば、食中毒が起こったグループと、起こらなかったグループで、何が違ったのかをいろいろ比較しながら考えたいとき。

日常診療で得られているデータを集めて分析するという研究方法です。

なので、研究のために、患者さんにいろんな制限を課すなど、新たに何かをするようなことはしません。

 

比較的簡単にデータが得られる研究方法です。

しかし、大きなデメリットがあります。

この研究方法は、すでにあるデータを集めて分析するという方法なのです。

なので、データを集めるときに、「都合が良いデータを選んできたのではないか?」という疑念が生じてしまうのです。

(このような状態を「バイアス」と言いますが、今はわからなくて全然オッケーです。また今度お話しします)

 

そのような疑念を持たれないように、できる限り、疑念を持たれないための配慮が必要になります。

あらかじめデータの取り扱いをしっかり決めた上で、研究を実施することが大切です。

4. 信頼性が高い臨床研究とは?

レベルⅡ~Ⅲ(レベル2~3)

レベルⅣの「観察研究」では、日常診療で得られたデータを使用するとお話ししましたね。

研究者は、治療にあれこれ介入せず、文字通り「観察」するという研究でした。

それに対して、レベルⅡ~Ⅲは、研究者が治療に介入する研究です。

文字通り「介入研究」と言います。

 

介入というのは、例えば、

患者さんをグループAとグループBに分けて、両者を比較するとき。

  • 患者さんをどっちのグループに振り分けるかを選んだり。
  • 研究の前にあらかじめ決めておいたルールにしたがって、患者さんを治療したりします。

 

この「介入研究」の良いところは、両グループを同じ条件下で比較できるところです。

レベルⅣの「観察研究」は、都合が良いデータを選ぶことができてしまうというデメリットがありましたね

「介入研究」では、そういうのができないように、事前に作った計画の通りに実施しなければなりません。

それによって、より客観的なデータが得られます。

 

「介入研究」の中でも、レベルⅡは特に信頼性が高いデータが得られます

それは、患者さんを無作為(ランダム)にグループAとグループBに振り分ける研究方法だからです。

これを「ランダム化比較試験」といいます。

無作為(ランダム)にどっちかのグループに振り分けると、何が良いのか?

それは、どちらのグループにも、同じ性質の患者さんが、ほぼ均等に振り分けられるところです。

 

例えば、患者さんを2つのグループに分けます。

そして、2グループ間で薬の効果を比較する「ランダム化比較試験」をするとしましょう。

 

70歳のおじいちゃんがきました。そして無作為(ランダム)に、グループAに入れられました。

また70歳のおじいちゃんがやってきました。今度はグループBに入れられました。

こういうのが何百も何千も繰り返されるとどうなるでしょうか?

ほぼ50%と50%、グループAとBで均等になりそうですよね?

なぜなら、完全に無作為(ランダム)に振り分けるとき、2つのグループのどちらかになる確率は1/2だからです。

信じられない方は、お友達とじゃんけんを1万回繰り返して、勝率を計算してみてみるとわかると思います。

 

最初の何回かは、たまたまどちらかのグループに偏るかもしれません。

でも、繰り返せば繰り返すほど、限りなく1/2に近づくでしょう。

こうして、高齢者に対する薬の効果を、公平に比較することができました。

 

また、年齢によって薬の効きかたが違ってくるような場合でも、無作為化によって、グループの年齢層は(ほぼ)同じになります。

なので、そういう場合も、正しく薬の効果を評価することができるのです。

高血圧の患者さんがやってきたときも、均等に振り分けられます。

高血圧で70歳のおじいちゃんも、グループ間で均等です。

誰が考えたのかわかりませんが、「ランダム化比較試験」ってすごい方法ですね♪

 

ちなみに、余談ですが、製薬会社が薬の効果を見極めるときに通常実施するのが、この「ランダム化比較試験」です。

これより「エビデンスレベル」が低い臨床試験だと、厚生労働省は基本的に認めてくれません(-_-;)

 

ただし、小規模のランダム化比較試験だと、実はちょっと困るときがあります。

無作為(ランダム)に振り分けたとしても、70歳のおじいちゃんが、たまたまどちらかのグループに多く偏ってしまう可能性があるのです(-_-;)

大規模だとそんなことはないんですが・・・。

 

あと、「介入研究」って、いざ実施するのがけっこうタイヘンなんですよねー。

まず、研究に参加してくれる人をたくさん集めるのは相当タイヘンです。

また、集まった人に対して、あらかじめ決めたルールにしたがって治療介入するのもタイヘンなのです。

「現実的にムリ!」という場合は、レベルを落として、「観察研究」をせざるを得ないということもあり得ます(泣)

 

以上、「観察研究」と「介入研究」を簡単にまとめると、こんな感じですかね。

信頼性 研究のしやすさ その他
観察研究 そんなに高くない 比較的簡単 工夫しないと信頼性があやしくなる
介入研究 けっこう高い 大変 大変なので、現実的に実施できない時もある

 

レベルⅠ(レベル1)

レベルⅡのランダム化比較試験で薬の効果を調べるとしましょう。

そんなとき、試験を10本実施すると10本全部で同じ結果になるとは限りません。

なぜか?

試験によって条件が異なるからです。

  • 高齢者の患者さんで試験をしたり。
  • 外国人の患者さんで試験をしたり。
  • ふつうより高用量の薬を使って試験をしたり。
  • 小規模の試験だったので、はっきりした結果がわからなかったり。

時には、他のいくつかの試験と逆の結果になる場合もあります。

試験によって結果が違うと困りますね(+_+)

「んだよ!飲んでいいのかダメなのかどっちだよ!?」

 

こんなとき、良い方法があるのです。

同じような試験を集めて、合体させて、いろんなタイプの患者さんがたくさんいる状態にして、その状態で分析すると、以下のようなことがわかるようになるのです。

  • 結局この薬は効果があるの?
  • どんな患者さんにどんな効果があるの?

このような分析方法を「メタ解析」と言います。

とっても信頼性が高い研究方法ですよ。

「観察研究」を合体させたメタ解析もできます。

でも特にすごいのが、もともと信頼性が高い「ランダム化比較試験」を合体させたメタ解析。信頼性は最強です!

ま、合体するときにはちょっとした注意点があるのですが、まあその辺は今は大胆に無視しましょう!

5. まとめ

以上、今回は人間を対象とした研究方法についてお話しました。

まとめとしてお伝えしたいことは、

  • 動物実験ではなく人間を対象とした研究結果を見てください。
  • 人間を対象とした研究結果を見るときは、研究方法に信頼性のレベルがあることを考慮してください。

ということです。

今回のお話はちょっと難しくなってしまいました(-_-;)

すみませんm(__)m

でもでも、全部わからなくてもオッケーです。

このまとめのところだけでもオッケーなので、覚えてもらえるとうれしいです♪

研究方法について、今後も出てくるたびにおさらいの説明をするつもりです。

【参考文献】
[1] 医学書院, Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014

おわり。